この春は、鹿児島県の加計呂麻島にも行ってきました。奄美大島の南側にある島です。
私の友人がこの島に一時期住んでいて、彼が京都にその島の特産物を持って戻って来たのが、加計呂麻島のおいしいものとの出会いです。その時に、一緒に来ていたアヤさんが紹介してくれた黒砂糖をすみれやでは販売していました。その西田製糖さんを訪ねたいと思い続け、この春やっと実現したのでした。
しかし、肝心の西田製糖さんは私が滞在した3日間はお休みで、結局製糖過程を見せてもらうことはできませんでした。この島の製糖工場はお天気や従業員の予定で作業日が決まります。サトウキビを刈って、それを加工して、お休みをとるというサイクルがあるのです。今回はタイミングが悪かったようです。でも、西田さんのお母さんとはお話ししたり、工場を見せてもらうことはできたので、行ってよかった。西田さんはとってもにこやかな穏やかなおばさまでした。
製糖作業は12〜5月まで。この期間を越えるとだんだん味が落ちてきます。
サトウキビは若い時に台風にあたると収穫が少なくなったり、味も悪くなるそうです。昨年は台風にあたらなかったから、たくさんできて美味しいとのこと。
虫はほとんどいないので、加計呂麻島では農薬は必要ないと言っていました。肥料は、「キビ配合」というのを農協から買って入れています。
刈ってきたサトウキビをこのような機械で絞ります。
そして釜にその絞り汁を入れて、アクを取りながら煮詰めます。不純物除去や糖汁を固まりやすくするために、石灰を入れるのですが、それが足りなかったりすると「モチ糖」という少し柔らかい黒糖になります。これが人気なのですが、西田さんはこれはたまたまできる時だけ、と言っていました。モチモチしすぎて、かくはん機に負担がかかるからあまり作りたくないそうです。でも、このモチ糖ができるのを待っているお店もあるのです。
加計呂麻島には西田さんの他にも5件くらい製糖工場があって、私はそのうち数件をまわりましたが、どこも小さくて、当たり前のように薪で煮詰めていました。ちなみに、サトウキビの絞りカスも燃料になります。
西田製糖では、キビ酢も作っています。貯蔵タンクを見せてもらいました。
このタンクにアクをとったサトウキビの煮汁と水を入れて置いておくと、お酢は2〜3日後から発酵が始まって、しゅわしゅわいい始めて、2〜3年したら熟成していきます。
蔵に菌が住み着いているので、ここのタンクに入れるだけで発酵して美味しいお酢になるそうです。熟成したら、こんにゃくとよばれる膜ができます。この膜自体は食べることができません。
このキビ酢、ミネラルやポリフェノールを豊富に含んでいるので、とても身体によいそうです。実は今年のサトウキビの製造シーズンが終わったら、西田製糖ではキビ酢のボトル詰めができる工場を稼働させはじめるそうです。これまではJAに卸して、他のキビ酢や水とブレンドして販売するしかなかったのですが、今年からはオリジナルの原酢を自ら販売し始めます。もちろん、すみれやでも仕入れたいと思っています。お楽しみに。
今回の訪問での収穫の一つに、新たにおいしい黒砂糖を作っている生産者さんと知り合ったことが挙げられます。在来種のサトウキビのタイケイ種で作っている小さな製糖工場です。3年前くらいからご夫婦で黒糖を作っています。
違う目的地に行く途中で、この精糖工場(小屋)を見つけ、ふらっと入っていったところ、シャイなおじさんがいろいろ説明してくれました。
在来種は収量は多くなくて、虫にも弱いそうです。やはり今のサトウキビの方が効率的。でも、この島では古くから黒糖を作っている人たちが結構いるので、美味しさで勝負したいと思い、タイケイ製糖の中田さんは在来種でがんばって作っています。
実際に食べてみたら、本当においしい! すっきりとした甘さで、食感もサクサクしていて、私はとても気に入ってしまいました。西田製糖さんの黒糖も私は好きなのですが、こちらはもっと複雑な味がするような気がします。また違ったおいしさです。
どちらも好きなので、両方とも入れることにしました! すみれやは小さな店なのに、黒糖を2種類も、それもどちらも加計呂麻島産のもの。なにやっているんでしょう。でもおいしいし、どちらの生産者さんもステキなので、いいのです!
ぜひ食べ比べてください。タイケイ製糖の黒糖は小さなお試しサイズもあります。ちょっとしたプレゼントにもよいかも。
※西田製糖は手前右、タイケイ製糖は右奥
黒糖だけで長くなってしまったので、他のことはまた後日報告します。(春山)