3月末に山口県上関町の祝島に行ってきました。

すみれやは祝島から、ヒジキを仕入れていたのですが、今回の訪問で、さらに寒干し大根、びわ茶、ワカメ、フノリ、アオサ、テングサなども仕入れることにしました。

 

個人的に祝島は10年くらい前から行ってみたい場所でした。なぜならば、この島の大多数の人たちが対岸に計画されて続けている上関原発の建設に反対していたからです。いわゆる過疎化している地域に原発が計画されることはよくあることです。そして、不安を抱えながらも原発を受け入れることによる経済的なメリットを現実的に選び、多くの地域で人々は原発建設を容認してきました。

ここ上関でも、容認派は多いのです。でも、祝島のおばあさん、おじいさんたちは、この美しい海や山のおかげで生きてこられたのだから、そこに原発を作るわけにはいかないと30年以上反対し続けています。祝島の漁師たちは、10億円以上の補償金に手をつけていません。

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そんな島でおいしいヒジキが採れるというのでこれまで食べていたのですが、すみれやを始めて今度はそれを売る側になりたいと思い、それならば一度生産現場に行かなければと、やっと時間を作って行くことができました。

 

今回は2011年頃まで祝島茶会を京都で開催していたタナベさんと、これまでヒジキを仕入れてくれていたキッチンハリーナのトモコさんという、現地と信頼関係を丁寧に作ってきたお二人と一緒に訪問することができました。

 

そして、運良くヒジキやフノリを取る作業を体験させてもらうこともできました。私が行ったときは潮の関係で昼間に潮が引いたので、明るいところで楽しくヒジキを刈ることができたのですが、タイミングによっては寒い時期の真夜中にヒジキをひたすら刈る作業があるそうです。

 

17祝島9 フノリを採っているところ。

17祝島31 これがヒジキです!

 

そして、刈ったヒジキはすぐに鉄釜で炊きます。鉄釜で炊くのがポイントです。ヒジキの鉄分はこの鉄釜によるものが大きいらしいのです。祝島では火には薪をくべていました。

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もう一つのポイントは、刈ってからすぐに炊くという点。市販のヒジキは、刈ってから一旦干して、その後炊くという方法のものが多いらしいのですが、祝島の小規模の生産現場では、海からすぐの家や加工所の横で火をおこしてすぐに炊きます。そしてそのまま一晩蒸らして次の日に釜から出して天日干しするのです。潮の香りと柔らかさはこの作り方によるものでしょうか。

この天日干しもまたポイントです。祝島に吹く潮風で干した海藻や大根、びわの葉は太陽の光を浴びながら、絶妙なおいしさの乾物に仕上がっていきます。

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今回の訪問の印象は、ステキな若い人たちが結構いるなぁ〜ということでした。もちろん高齢化が進んでいる島なのですが、意志を持って外からこの島に移り住み、子育てなどをしながら生産活動を行っている人たちに会う機会が何回もありました。どこでもそうですが、他所から移り住むって、いろいろと大変なことが多いと思います。でも、この美しい海を守りたいという気持ちと技術を古株の島民から受け継いで、安心して食べることのできるおいしいものを丁寧に作ることによって、この自然を守っていこうとしている若い人々に会うことができて、なんだか希望を感じました。

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中国電力はまだまだ上関原発の建設をあきらめていません。むしろ、建設のタイミングを窺っている状態です。

 

すみれやとしては、祝島の若手が作るものを京都の人たちに知ってもらい、食べることによって彼らとつながっていけたらと思っています。原発がなくても、自然の恵みをいただくことによって、彼らも私たちも生きていける、そんなつながりの一つになれたらと思っています。

 

実は今回の訪問では、たまたまなのですが、行きのフェリーで京都からもう2組の人々と一緒になりました。五条にあるキトゥンカンパニーのご一家と、福知山で農業をしているご家族です。京都と祝島はつながりが多いようです。このご縁を大切にしたいと思います。

 

さて、すみれやでは今週から祝島直送の乾物が揃うので、一斉に売り出します。人気のヒジキだけでなく、さっと使いやすいフノリ、天日干しの天然ワカメ、そのまま食べてもおいしい寒干し大根(切り干し大根)、これからの水分補給に最適のびわ茶などなど、乾物屋らしいラインナップに私もうれし涙です。ぜひ、一度試してください。(春山)

 

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