島根での2件目の訪問は、出雲市駅から車で1時間ほど車を走らせたところにある奥出雲の森田醤油店さんでした。すみれやでは現在、森田醤油店さんから丸大豆醤油(濃口)と生醤油を仕入れています。当日は、社長の森田さんが迎えてくださいました。
丸大豆から作る醤油は流通する醤油の2割ほどで、8割以上は脱脂加工大豆から作られています。脱脂加工大豆とは、生の大豆から油を搾った後の大豆のことです。丸大豆の油は醗酵・熟成をする間にグリセリンに変化して、自然の旨味となります。丸大豆から醤油を作っているところで、国産の大豆を使っているところは2%のみということで、全体の0.4%だけが国産丸大豆から醤油を作っているということになります。
そして全国でお醤油を作っている工場は1200軒ほどあるそうなのですが、全ての製造工程を自社で完結するところは1割程度だとのことです。
森田醤油店さんは、30年ほど前から全てのお醤油を国産の丸大豆と小麦と奥出雲の湧水を使って仕込んでいます。さらに、原料に使うお塩は輸入の天日塩を沖縄の海水で戻して作られたシママースを早い時期から使っています。大豆を蒸すところから麹を作り、発酵・熟成させて、絞り・圧搾し、火入れをして瓶詰め・ラベル貼りして出荷まで、全ての製造工程を奥出雲の工場でされています。3ヶ月で醤油を作ることもできるのですが(アルコールや添加物などを添加することが多い)、森田醤油店さんでは濃口醤油は1〜2年かけてゆっくりと熟成させます(もっと長い時間をかける商品もあります)。
発酵・熟成をするための木桶が森田醤油店さんには50本ほどあるとのこと。様々なお醤油が大きな木桶に入っている蔵をみせていただきましたが、圧巻でした。木桶を作る職人さんがいなくなっている中、森田さんは木桶の修理や再生にも取り組んでいます。漏れがあった木桶を竹で編んだ箍(たが)で締めなおしたり、木桶を一回解体して組み直す試みをしたとのこと。現在流通している醤油のうち、「木桶仕込み」の醤油は約1%といわれているそうです。森田醤油店さんでは木桶のほかに、FRP(繊維強化プラスチック)や琺瑯のタンクも使っています。それでも木桶仕込みを続けられるようにと、容器を修理する技術を引き継ぐ活動もされています。
ところですみれやでは生(なま)醤油を仕入れているのに、その違いをいつもうまく説明できていませんでしたので、聞いてみました。
丸大豆醤油など通常のお醤油は殺菌や品質を安定させるためなどに火入れをして酵素も酵母も壊します。生醤油は火入れをせずに酵母のみを濾過したものです。そのままでいただくと香りも味も穏やかですが、加熱をするととてもよい甘い香りがして、塩味も感じやすくなります。ステーキにジャっと生醤油を熱したソースをかけて提供するお店もあるそうです。
火入れのお醤油も生醤油も、一旦開封したら冷蔵庫で保存してください。
森田さんの中では、これからさらに挑戦したいことがいろいろとあるようでした。伝統の技を守りつつ、先を見据えてお仕事をされている森田さん。大変だけどなんだか楽しそうで素敵でした。(春)