10月の初めに熊本にある市房山さいとう農園の齋藤さんに会いにいきました。齋藤さんは、すみれやに1年目からずっと粟や蕎麦の実などの雑穀を卸してくれています。やっとのこと、会いに行くことができました。
実は齋藤さんは数年前まで滋賀の朽木に住んでいたのですが、3.11の後に、水上村に家族と移住されました。とても真剣に環境のことなどを考えて農業をしている素敵なご夫婦でした。
まずはもち粟とうるち粟、そしてお米を栽培している田畑に連れて行ってもらいました。水上村在来のもち粟が見事にたわわに実っていました。しかし雑穀は収穫してからの調整と言われる作業が大変なのです。細かいつぶつぶの周りの殻を取り除き、最後はピンセットで汚い粒を取り除く作業を手でやっているそうです。聞いただけで気が遠くなります。
これまで齋藤さんは様々な種類の雑穀を作ってきましたが、結局水上村在来のもち粟が一番この土地の風土に合っているとのことで、これからはこれを中心に作っていきたいと言っていました。雑穀の生産は、正直大変な割にそれほど大きな収入になるというわけではないのですが、齋藤さんは「地域の雑穀を作り続けていきたい」と言っていました。種を継ぐというのは、こういう地道な作業の繰り返しなんだなと実感。「雑穀のタネを持っていたら、どこの土地でも育てられる」とも話していました。実際、ひと昔までは飢饉用に雑穀を保存していた家もあったそうです。
タカキビの畑も見せてもらいました。近隣の村、五木村在来のタカキビで、とても背が高くてびっくりしました。この他に、大豆や小豆なども作っているそうです。
齋藤さんはお米も作っています。その理由に感動してしまいました。水上村周辺でもヘリコプターによる農薬の散布が行われているそうです。彼はその空中散布をやめさせるために、無農薬で誰も文句が言えないほど美味しいお米を作りたいと語っていました。実際に、食味コンクールを狙うそうです。そんなやり方で農薬の空中散布をやめさせることができたら、ステキすぎです。
齋藤さんは地域の仲間たちと焼畑もしています。毎年一区画ずつ焼いて、そこに雑穀や大根などの種を蒔きます。1年目は作物の収穫ができて、少しずつ植生が豊かになってきて、20年後には若い森になるのですが、そこでまた焼畑にするというサイクルで昔はやっていたそうです。人間が木を利用しながら山と上手く付き合っていく知恵なのでしょう。「人間と共存していく森づくり」が再現できたら、これからの里山の一つのあり方としても貴重な実践になると思います。
京都からは、雑穀や在来種について詳しい友人と、雑穀料理などをお店で作っていた友人とともに訪問しました。そしてこの日は、齋藤さんご夫婦の他にも焼畑メンバーのご夫婦2組とお会いしたのですが、ずーっと喋りっぱなし。皆さんとても魅力的な人たちで、お話ししていても楽しくて勉強になりました。生産者さん巡りはいつも本当に面白いのです。
ちなみに、齋藤さんの紹介で宿泊した農家民宿のご家族は長年無農薬でお茶を作っているのですが、そのお茶がとても美味しくて、今仕入れようか悩んでいます。すみれやはお茶がすでに多いのですが…。齋藤さんから今年仕入れているのは、もち粟、うるち粟、在来の粒蕎麦、そして紫裸麦です。タカキビもこれから注文しようと思っています。量り売りコーナーに置いていますので、ぜひお試しください。
(春山)